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4. MPLと特許権
 
MPLは従前のすべてのオープンソース・ライセンスよりもずっと完全な形で特許権を扱っている。復習すると、特許権とは、具体的に請求項に記載された発明を他者が作成し、使用し、販売し、販売の申出をし、または輸入することを排除する権利を法の力で付与するものだ。特許権の請求項は他者へライセンスされうる。MPLは、実際には、より正確に[特許権の請求項]を、「ライセンサーがライセンスできるすべての特許権の中にある、方法、プロセスおよび装置を含むがそれらに限られない請求項」(MPL1.10.1条)として定義している。これは、実際に米国特許商標庁によって与えられている一般の特許権(utility patents)の種類と合致している。幸いにも、請求項の種類中の技術的な区別はここでは重要ではない。
 
まず、[初期開発者]は以下の特許権ライセンスを付与する。
 
[オリジナル・コード]の作成、使用または販売により侵害される[特許権の請求項]について、[オリジナル・コード](またはその一部)を作成し、作成させ、使用し、実行し、販売し、および販売の申出をし、および/またはその他の処分をすること(MPL2.1(b)条)
 
上記2.1(b)条にもかかわらず、1) [あなた]が[オリジナル・コード]から削除するコード、2) [オリジナル・コード]から分離されたコード、または、3)i) [オリジナル・コード]の改変により生じた侵害、もしくはii) [オリジナル・コード]と他のソフトウェアもしくはデバイスとの組み合わせにより生じた侵害には、特許権ライセンスは付与されない。(MPL2.1(d)条)
 
これらの複雑な条項は、特許権となる権利の周りに重要な線を描く。これらは私たちがオープンソース・ライセンスにおいてまだ目にしていない、最初の明示の特許権ライセンスだ。本書でこれまでに説明したライセンスは、せいぜい黙示の特許権ライセンスを含むだけだった(ライセンスがGPLのような裸のライセンスの場合は、黙示の特許権ライセンスも全く存在しない可能性もある。)。黙示の特許権ライセンスは、存在したとしても、その範囲はあいまいだ。
 
MPLの明示された条項の下では、[初期開発者]は自分の特許権の請求項を、ある特定のソフトウェアの実施例、すなわち[オリジナル・コード])のライセンシーへライセンスするが、他者が他のソフトウェアにおいて異なる実施例を作成し、使用し、または販売することを排除することができる[初期開発者]の権利は制限されない。
 
[初期開発者]が初めは自分の発明が後でどう適用されるのがわかっていなくても、特許権の請求項は潜在的に価値がある。開発者は、自分の請求項が元々想定していたものと大きく異なる用途をカバーするのを発見するかもしれない。あるいは、そのような請求項は、他者が提供した技術(または、プロプライエタリなままの技術)と組み合わさった用途をカバーするかもしれない。このように、[オリジナル・コード]を作成し、使用し、または販売することで侵害される特許権の請求項は、単に[オリジナル・コード]を作成し、使用しまたは販売するより広い用途が見つかる可能性がある。
 
例えば、ワードプロセッサを動かす特定の[オリジナル・コード](「WPバージョン1」としよう。)で使用することをMPLでライセンスされている、カット/ペーストの機能についての特許権の請求項は、電子メールやグラフィックス・プログラムなど他の価値のある応用ができるかもしれない。初期開発者であるオープンソース・ライセンサーがWPバージョン1を頒布する場合を考えてみよう。そのライセンサーは3つの価値のある請求項を含む特許権を有しているとしよう。その請求項を大雑把に(実際に特許権の請求項を書く場合よりは専門的ではないが)言い換えると以下の通りだ。
 
(1)カット/ペースト機能を実行するソフトウェア。
(2)ワードプロセッサのための請求項1のソフトウェア。
(3)電子メールプログラムのための請求項1のソフトウェア。
 
ライセンシーがWPバージョン1である[オリジナル・コード]を作成し、使用し、または販売することができるように、[初期開発者](すなわち特許権者でありMPLライセンサー)は十分な特許権をライセンスする(MPL2.1(b)条を参照。)。 その結果、MPLに従ったライセンシーは[初期開発者]の広い請求項1と、より狭い請求項2についての限定されたライセンスを取得する(請求項2はワードプロセッサに適用されるだけだが、請求項1はどのようなカット/ペーストのアプリケーションにも適用できるので、請求項1は請求項2より広い。)。
 
・MPLの特許権ライセンスにおいて、ライセンシーは、カット/ペーストの機能を含む派生的なワードプロセッサ(「WPバージョン2」)を作成し頒布できるだろうか?おそらくできない。 MPLの特許権ライセンスは[オリジナル・コード]だけ、またはその一部だけをカバーしている(MPL2.1(b)条)。 私たちは、少なくともカット/ペーストの機能を実行する[オリジナル・コード]の一部を含むかどうかを確かめるためにWPバージョン2を調べなければならないだろう。[オリジナル・コード]のカット/ペーストのソフトウェアが改変されているなら、[初期開発者]の特許権ライセンスはそれをカバーしていない(MPL2.1(d)条)。
 
・ライセンシーは他のライセンサーから入手した、違うワードプロセッサにおいてカット/ペーストの機能を実行することができるだろうか?そのソフトウェアがオリジナルのライセンサーの広い請求項1またはより狭い請求項2を侵害するなら、実行できない。MPLの特許権ライセンスは[オリジナル・コード]とは別のソフトウェアをカバーしていない(MPL2.1(d)条)。
 
・ライセンシーは電子メール・ソフトウェアにおいて、カット/ペースト機能を実行することができるだろうか?できない。MPLの特許権ライセンスは、[オリジナル・コード]を作成し、使用し、または販売することによって侵害されることのない請求項は除外される(MPL2.1(b)条)。電子メール・請求項はオリジナルのワードプロセッサ・プログラムにより侵害されることはないので、[初期開発者]の狭い請求項3はMPLから除外される。
 
・ライセンシーは画像処理プログラムでカット/ペースト機能を実行することができるだろうか?[初期開発者]の広い請求項1についての別途のライセンスがなければできない。この例で、[初期開発者]は特別に画像処理プログラムをカバーする請求項は持っていないが、カット/ペーストの請求項1がそのような新しいアプリケーションに適用するほど広いことに注意してほしい。[初期開発者]の請求項1について、新しいグラフィック・アプリケーションを[コントリビュータ]が開発したとしよう。誰でも別途に他人の特許権の請求項上に改良物についての特許権を取ることを妨げられない。その人は単に、より広い請求項へのライセンスなしでは改良物を実施することができないだけだ。その結果、2つの会社がお互いへクロス・ライセンスをする価値がある特許権の請求項をそれぞれ作成するかもしれない。1つがカット/ペーストをカバーする広い請求項であり、もう片方が画像処理プログラムでカット/ペーストをカバーするより狭い請求項だ。どちらの特許権者も自分の特許権の請求項([初期開発者]の請求項1、またはコントリビュータの画像処理の請求項)を、オープンソースまたはプロプライエタリな画像処理プログラムのため互いにライセンスするにはMPLによらなくてもよいことに注意してほしい。
 
言い換えれば、オリジナルのMPLの特許権ライセンスは請求項1および請求項2、並びに特定の[オリジナル作品]およびある種の認められた[改変物]にだけ適用される。
 
[コントリビュータ]に関して、以下はその後のライセンサーの相互的な特許権ライセンスだ。
 
単独でおよび/または[コントリビュータ・バージョン]との組み合わせ(またはそのような組み合わせの一部)によって[コントリビュータ]が作成した[改変物]の作成、使用または販売によって侵害される[特許権の請求項]について、1)[コントリビュータ]が作成した[改変物](またはその一部)および、2)その[コントリビュータ]による[改変物]と[コントリビュータ・バージョン]との組み合わせ(またはその組み合わせの一部)を、作成し、使用し、販売し、販売の申出をし、作成させ、および/またはその他の処分をすることをライセンスする。(MPL2.2(b)条)
 
上記2.2(b)条にもかかわらず、以下のものに特許権ライセンスは付与されない。1) [コントリビュータ]が[コントリビュータ・バージョン]から削除したコード、2) [コントリビュータ・バージョン]から分離されたコード、および3)i)第三者による[コントリビュータ・バージョン]の改変、またはii)コントリビュータによって作成された [改変物]と他のソフトウェア([コントリビュータ・バージョン]の一部を除く)またはデバイスとの組み合わせにより引き起こされた侵害、4)その[コントリビュータ]によって作成された[改変物]が含まれない[対象コード]によって侵害された[特許権の請求項](MPL2.2(d)条)
 
[コントリビュータ・バージョン]とは、[オリジナル・コード]、コントリビュータによって使用された従前の[改変物]、およびその特定の[コントリビュータ]によって作成された[改変物]の組み合わせをいう。(MPL1.2条)
 
これらの条項は[オリジナル作品]のライセンシーである[コントリビュータ]によって提出された[改変物]を扱う。各[コントリビュータ]は、[改変物]が単独か[オリジナル作品]と組み合わせて作成され、使用され、または販売されるのを認める、自分の特許権について相互的なライセンスを付与する。したがって、[コントリビュータ]が画像処理のためのカット/ペーストのソフトウェア、または全く異なる発明(字体処理の新しい方法など)を発明し、それを自分の[貢献部分]に含んでいるならば、その請求項は[初期開発者]、他のすべての[コントリビュータ]、およびすべての将来のライセンシーへ、私がちょうど前に説明した複雑な条件と同様の条件にて相互的にライセンスされる。
 
加えて、これらの条項は、[コントリビュータ]が単に電子メール機能を加える[改変物]を作成することだけで自動的に[初期開発者]の請求項3のライセンスを得られるということではない。その特許権の請求項をライセンスする権利を持つ[初期開発者]は明確にそのことを除外している(MPL2.1(d)条を参照)。
 
[コントリビュータ]になりたい場合、[改変物]を作成し、使用し、または販売する前に、[初期開発者]または従前の[コントリビュータ]から追加で特許権ライセンスを取得する必要がある可能性がある。
 
MPLはそのことを明らかにするが、以前に本書で議論した黙示のライセンスの可能性と共に、特許法の下では、同様の問題がすべてのオープンソース・ライセンスにも存在している。オープンソース・ソフトウェアへの改良物を作成することを計画している者はすべて、それらの改良物を作成し、使用し、または販売するのに必要なすべての特許権の請求項のライセンスを取得しなければならない。改良物をカバーできる、ライセンサーによって付与される特許権ライセンスは、筆者が今まで議論してきたライセンスのいずれにおいても、黙示または明示されているわけではない。(訳者注:原文通り。ただ、「黙示」のライセンスについては、筆者は認めることに否定的な立場ではあるものの、理論的に全否定されるとまでは述べていないので注意。)
 
筆者は、このような黙示または明示の特許権ライセンスの制限を、使用範囲の制限として考えたい。使用範囲の制限は、時に微妙な方法で、特定の分野または用途について特許権の使用を制限する。オープンソース・ライセンスにおいて、著作権のライセンスは派生的著作物を作成するための無制限の自由を与えているものの、特許権ライセンスはそうではない状況である。ではここで、どのように使用範囲を扱うべきだろうか?
 
フリー・ソフトウェア・ガイドライン、オープンソースの定義および第1章で述べたオープンソース原則には何も書かれていない。これらは特許権について全く触れていない。オープンソースが扱う基本的な活動は、複製し、改変し、頒布することだ。それは著作権法の問題だ。作成し、販売し、販売の申出をし、輸入をすることに関する、特許権についてはどうだろうか。
 
筆者は、オープンソース原則と既存のオープンソース・ライセンスに合致した唯一の答えは以下のものであると考える。
 
オープンソース・ライセンスは、ライセンサーが頒布したままの形でライセンシーがオープンソース作品を作成し、使用し、販売し、販売の申出をし、輸入するのに十分な特許権をライセンスしなければならない。派生的著作物やその他の使用のための追加のライセンスをするかどうかは、ライセンサーの自由な選択に委ねられる。
 
第1文は、オープンソース・ライセンスにおける特許権ライセンスの最小限の範囲を述べているが、これはおそらく裁判所が明示の特許権ライセンスがないとき-裸のライセンスではなく、少なくとも契約である場合について-どのように決定するかを述べている。なぜなら、ソフトウェアを複製する権利は、通常、作成し、使用する権利がなければ無意味であり、頒布する権利は販売する権利がなければ無意味だからだ。
 
第2文は、特許権ライセンスの範囲を広げるための自由な選択について説明するもので、オープンソース原則には必須なものではない。
 
筆者は、結局、この特許権の原則をオープンソース原則の範囲外にしておくこととした。いくつかの重要な承認済みのオープンソース・ライセンスが特許権ライセンスの範囲に関して全く何も述べていないからだ。そう考えなければ、いくつかの既存のオープンソース・ライセンスがこの特許権の原則と両立しないと宣言しなければならず、オープンソースが何を意味するかについて人々をさらに混乱させる可能性があるからだ。
 
>>次項「5. 特許権からの防衛」へ(ここをクリックすると飛びます。)
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2008.05.07 Wed l 第7章 MPLライセンス→4. MPLと特許権 l COM(0) TB(0) l top ▲
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